辺獄インフェルノ

世界の怖い事件をまとめています

🌍 世界の片隅で起きた、真実の記録。
遠い国の出来事のようでいて、今を生きる僕たちにも通じる――
このブログでは、実際に起きた事件や人間のドラマを
静かに、丁寧に語り継いでいきます。

アンナ・ツィンマーマン

愛人解体

一線を越えた母親が愛していたもの

 

 

 お母さんの料理で何が一番好きですか?

 カレーライス、スパゲティー、シチューなどはいかがでしょう。

 母の味はいくつになっても忘れられないものである。

 ちなみに僕が一番好きだった母親のメニューは、昨日のカレーの残りで作ってくれた、翌日の昼飯に出されるカレーうどんである…

 この事件が起こったのは1984年の西ドイツ。

 一見すると普通の家庭であるツィンマーマン一家。

 母親のアンナが子供達へのディナーに、シチューの皿を置いていく。

「さあ、たくさん召し上がれ」

 旨そうな匂いと熱々の湯気を放つシチュー。

 だがこのシチューには「ある恐ろしい材料」が使われていた。

 恐ろしい材料、それは――愛人の肉だったのである。

 

 

 

 1984年7月26日。

 西ドイツ、メンヒェングラートバッハ。

 この日、地元警察がとある家の家宅捜索をしていた。

 そこは異様な家だった。

 壁には様々なホラー映画のポスター、ラックにもホラービデオがびっしりと並んでいる。

 水槽の中でトカゲがじっとこちらを見つめ、更に床ではオオトカゲ、ヘビやタランチュラなどが悠然と行き来しているのだ。ペットの餌とおぼしきネズミもおり、とにかく部屋中から変な匂いが漂っていた。

 顔を顰めながらも現場を調べる警官たち。

 すると、キッチンを調べに行った一人の警官が驚いて声をあげた。

「何だこれは!? 奥さん、説明してください!」

 駆け付けた他の警官も一様に青ざめた。

 なぜなら、キッチンが血みどろの真っ赤に染まっていたからである。

 更にキッチンの冷凍庫を開けると、そこにはおびただしい数の肉が収められていた。

「奥さん、これは一体……」

「買ってきた豚肉ですわ。そちらはヒツジの肉です」

 ホラービデオ、爬虫類やクモ、血みどろのキッチン――。

 見るからに怪しいが、犯罪と決めつけるにはまだ早い。

 取り敢えずはこの怪しげな肉を押収しようかと、警官が手を伸ばした時……

「ちょっと奥さん、これ!」

 肉の入ったタッパーを開けた警官が悲鳴を上げ、中を覗き込んだ別の警官も口元を押さえて顔を背けた。

 タッパーの中に入っていたのは、豚でもヒツジでもない。

 一目で分かる。

 それは明らかに人間の耳、人間の指。

 そして、男性のイチモツだったのだ。

 

 

◆ホラーと性に魅せられた女

 アンナ・マルティナ・ツィンマーマン

 1955年。旧西ドイツ、ルール地方の生まれ。

 彼女は夫のヴィルヘルムとの間に2人の子供も設け、ごく平凡な暮らしをしていた。

 アンナには趣味があった。

 それはホラー映画、とりわけスプラッタ映画の大ファンであったこと。

 

 ほんの一例だが、70年代のホラー映画というと――

 悪魔祓い映画の代表作「エクソシスト」

 いじめっこへの血みどろ復讐劇「キャリー」

 テキサスチェーンソー、レザーフェイスでおなじみの「悪魔のいけにえ」

 デッドバイデイライトにも出てくるマイケルの映画「ハロウィン」などがある。

 

 アンナのホラー好きはどんどんエスカレートして行き、その趣味は実生活にも影響していった。

 壁じゅうにポスターを貼り、ヘビやオオトカゲ・タランチュラなどの、一般的に見ておどろおどろしい生き物を室内で放し飼いにするようになったのだ。

 しかもアンナはペットの餌として買っていたネズミを調理し、家族の食卓にも出していたのである。

 

 また、アンナにはもう1つの顔があった。

 それは、ニンフォマニアであること。

 ニンフォマニアというのは「色情症」とも言われ、一言でいえば性行為に強く依存してしまっている女性のこと。単純に旺盛という意味ではなく、自分自身でも性欲をコントロールできなくなってしまう精神病の一種である。

 性的なトラウマがきっかけで発症してしまうことが多く、症状の特徴としては

・浮気や不倫を繰り返し行なう

・見知らぬ人との性行為を好む傾向にある

・自慰行為の回数が多い などが挙げられる。

 神話に出てくる妖精ニンフが語源であり、goo辞書によると「性的な快楽を得ることよりも、自己アイデンティティーの確認が目的とされている」のだそうだ。

 つまりアンナにとってセックスは人生・生活においてなくてはならないものだった。

 子供は2人だが、夫のヴィルヘルムは短時間に何度もアンナの相手をすることに、体力的にも精神的にもへとへとになっていたのだ。

 そのため25歳になったアンナが外で愛人を作って楽しむようになっても、ヴィルヘルムは怒るどころか安心したという。

 

 そうしてアンナは、ジョセフ・ヴィルツという32歳の理髪師の男性と出会った。

 ジョセフは背が高くハンサムで、アンナとは2年に渡って関係を持ち続けた。

 一方で夫のヴィルヘルムは、自身の負担が減って安心したものの、妻が外で浮気を繰り返しているという事実に呆れかえり……やがては家を出て行ってしまった。

 

 

◆身勝手な犯行

 アンナはジョセフとの日々を楽しんでいたが、ヴィルヘルム同様、ジョセフも段々とアンナの相手をすることに疲れてきてしまった。

 付き合い始めてから2年後の1981年。

 何が原因かは不明だが、愛人ジョセフは性的不能になってしまった。

 関係を続けるにしても別れるにしても、普通ならば2人で話し合って答えを出すものである。

 だが、アンナの場合は違った。

「役に立たないなら、やるしかないわね……」

 ある日アンナはジョセフを家に招き、彼に睡眠薬入りのドリンクを飲ませた。そうして意識を失ったジョセフを風呂場まで運び、浴槽で溺れさせたのである。

 命を奪われたジョセフはその後キッチンに運ばれ、チェーンソーで細かく解体され、彼の肉は小分けにしてパックに保存された。

 ――なぜそんなことをしたのか?

 そう、アンナはジョセフの肉を調理し、食卓に出していたのである。

 ミートパイ、ハンバーグ、そしてシチュー。

 ジョセフは様々な方法で調理され、アンナ、そして彼女の2人の子供の胃袋に収まったのだ。

 ちなみにこの時点で子供の年齢は、6歳と4歳。彼らは母の凶行など知る由もなく、素直にランチやディナーを口にしていた。

 

 

◆事件の発覚

 解体され、少しずつ食べられてしまったジョセフ・ヴィルツ。

 まっとうな仕事をしていた彼がいなくなったと気付かれるのは、時間の問題だった。

 何日経っても出勤してこない上、家賃の支払いもされていない。アパートの大家がジョセフの勤務先に連絡を入れたところ、理髪店にもずっと出勤していないという。

 仕方なく大家さんがマスターキーでジョセフの部屋に入るも、部屋の中は特に変わった様子はない。冷蔵庫の中には食料もあり、服も日用品もそのままで、とても夜逃げをしたという感じには見えなかった。

 何だか不穏な空気を察知した大家さんは警察に相談し、そのままジョセフの失踪届を出したのだった。

 

 約1ヵ月後、1984年7月7日。

 公園で遊んでいた少女が、黒いビニール袋に入った奇妙な物体を発見した。

 不思議に思ってよく見てみると、なんとビニール袋の破れ目から人間の目らしきものが覗いていた。

 少女の発見により警察が出動。ビニール袋から男性の頭部と骨が発見され、まもなく被害者の男性が「行方不明になっていたジョセフ・ヴィルツ」であると判明した。

 調べてみると、ジョセフの骨からは綺麗に肉が削ぎ落されており、どこを探しても他の肉片は見つからなかった。

 これらのことから警察は、ジョセフの肉は食べられた――いわゆるカニバリズムが絡んだ事件であろうと見当をつけた。

 ジョセフの交友関係を調べても、怪しい人物が全く見つからない。

 しかし、少ないながらも大きな手掛かりがあった。

 ジョセフの頭部が入っていた、黒いビニール袋である。

 その袋は、地元のレンタルビデオ店で使われていたものだったのだ。

 警察はここで1つの可能性を見出した。

「ホラー映画を観ている人間が、この事件を起こしたのではないか?」

 少々強引な仮説だが、警察は実際にこのビデオ店でホラー映画を借りた履歴のある人間を調べていった。

 一人ずつ調べていく中で、ヴァルター・クロンという男が捜査線上にあがった。

 彼は過去に食人事件を起こしており、女性の遺体を食べた罪で服役経験のある人物だった。

 これは怪しいということで、警察は早速ヴァルターに事情を聞くことにしたのである。

 しかしヴァルターはこう言った。

「俺は確かに女の肉を食った。だが今は、もう人は食ってねえよ」

 ヴァルターは重要参考人として扱われていたが、警察は平行して他のホラーファンへの聞き込みも続けていた。

 

 そこで行き着いたのが、アンナ・ツィンマーマンだ。

 アンナは女性であり母親であることから、「恐らく事件とは無関係であろう」と警察は踏んでいた。

 取り敢えず形だけでも話を聞くかということで、アンナの住むアパートを訪ねたのだ。

「すみません奥さん、この男性を知りませんか?」

 ジョセフの写真を見せられたアンナは、こう言った。

「そんな理髪師、知りません」

 うっかり発してしまった「理髪師」という言葉。これによってアンナは拘束され、すぐに家宅捜索が行なわれた。

 

 ホラー映画のポスター、床を這う不気味なペット達、血塗れのキッチン。

 そして、冷凍されていた男性の耳や指やペニス。

 逮捕されたアンナは精神鑑定を受けたのち、正常と判断されて収監されたのだった。

 

 

 ★

 

 

 本事件の恐ろしさは、身勝手な理由から愛人を手にかけたことはもちろんだが、その肉を幼い子供達に食べさせていたという部分だと感じる。

 アンナはスプラッタ映画に魅了されており、実生活にもホラー要素をふんだんに取り入れていた。

 映画やゲームの影響が1つのきっかけで事件に繋がったという話は、現在でも残念ながらごくたまに耳にする。

 もちろんそれらの作品に100%責任があるわけではなく、あくまでも受け手側の問題だと僕は感じている。

 皆さんの中にも、コレに影響されてこんなことをした、という経験があったらぜひ教えて頂きたい。

 

ルドルフ          

 

本事件を動画で見たい方はこちら

 

 

 

 

 

※当ブログの文章・画像の無断転載・複製を禁じます。

Copyright © Project Limbo All Rights Reserved.