辺獄インフェルノ

世界の怖い事件をまとめています

🌍 世界の片隅で起きた、真実の記録。
遠い国の出来事のようでいて、今を生きる僕たちにも通じる――
このブログでは、実際に起きた事件や人間のドラマを
静かに、丁寧に語り継いでいきます。

ゲイリー・マイケル・ハイドニク

邪悪な啓示

欲望を溜めた地下室の闇

 

映画「コレクター」の基となった事件

 

 

 もしも異常者に監禁されたらどうしますか?

 ある日突然さらわれ、暗い地下室に閉じ込められ、酷い食事と拷問の日々の中――

 脱出するため、あなたはどんな策を考えますか?

 この事件が発覚したのは1987年のアメリカ。

 自ら宗教法人をたちあげ、神の愛を説いて信徒を増やし、スラムに住む貧しい人や子供達にハンバーガーをふるまっていた彼は、周囲から親しみを込めて「ハンバーガー司祭」と呼ばれていた。

 ゲイリー・マイケル・ハイドニク。

 この男は愛情溢れる笑顔の裏で、恐るべき犯罪に手を染めていた。

 薄暗い地下室に監禁された女性たち。

 彼女達がさらわれたのは、男の子供を産むためだった。

 

 

 

 1987年3月24日。

 アメリカ、ペンシルベニア州 フィラデルフィア。

 時刻は真夜中。この近辺の夜の商売を管理している男性・ヴィンセントの部屋に、1人の女性が駆け込んできた。

 女性は酷く痩せていて、やつれた顔は青ざめ、息を切らして今にも倒れそうになっている。

 慌てたヴィンセントが女性を確認すると、その顔には見覚えがあった。

 彼女はヴィンセントの管理の元で働いていた娼婦、ジョセフィーナ・リヴェラだった。

 

「ジョセフィーナ……。大丈夫か、お前今までどこにいたんだ?!」

 

 実はジョセフィーナは4カ月前、仕事中に失踪し行方不明となっていた。

 それが突然現れ、次の瞬間俄かには信じられないことを話しだしたのである。

 

「4カ月間、地下室に監禁されていた……。他にも3人の女性がいて……あいつに殺された子もいた。遺体を食べられた、助けて……!」

 

 途切れ途切れにジョセフィーナから訴えられたヴィンセントは、これは只事ではないと察し警察に通報。

 そうしてジョセフィーナの証言から1人の男が逮捕されたのだが、更に調べると、男の家の地下室からは3人の女性が発見された。

 いずれの女性も足首を鎖で繋がれ、1人は地下室に掘られた底の深い穴の中に入れられていた。

 3人の女性が保護されたのと同じころ。

 妙に嫌な匂いがするキッチンを調べていた警察は、更に信じられないものを発見する。

 男の部屋の冷蔵庫には、明らかに人間のものと分かる腕が入っていたのだ。

 逮捕された男の名前は、ゲイリー・マイケル・ハイドニク、当時43歳。

 なんとハイドニクは自宅の地下室に女性たちを監禁し、乱暴し、拷問し、おぞましい計画に参加させていたのである。

 ハイドニクの計画とは、女性達に自分の子供を産ませることだった。

 

 

◆恐ろしき野望

 ゲイリー・ハイドニク。

 1943年11月21日 アメリカ、オハイオ州クリーブランドの生まれ。

 両親はアル中の母親の浮気が原因で、ハイドニクが2歳の頃に離婚している。

 ハイドニクと彼の弟を育てた父親は、とても冷酷で厳格な男だった。

 母親の浮気相手が黒人男性だったためか強い人種差別感情を持っており、息子たちにもことあるごとに差別的感情をむき出しにした話をしていたという。

 母親はその後も2度の再婚をしていたが、ハイドニクが28歳の頃に薬を飲んで自ら命を絶っている。

 

 ハイドニク自身は幼い頃から成績優秀で、IQ130であったと言われている。陸軍時代は衛生兵として訓練を受け、そこでも好成績をおさめていた。

 しかしある時から軍の仲間相手に高利貸しをするようになり、それが上層部の耳に入ったことでドイツの駐留部隊へ転属させられてしまった。

 このころからハイドニクには重度の精神疾患の症状が表れるようになり、1963年には陸軍を名誉除隊している。

 正式な病名は、統合失調症パーソナリティ障害だった。

 除隊後は軍人復員庁から支給される精神障害者年金の受給が認められ、月々約2000ドルで生活をするようになった。

 そんな中でも看護師資格を取得したり、大学で心理学や商法・経営学などの単位を取得するなど奮闘していたが、この間ハイドニクは13回も自殺未遂をしており、同時に精神病院への入退院を20回以上も繰り返していた。

 何がそこまで彼の心を蝕んでいたのか、理由は不明である。

 またハイドニクは頭の良さを生かして株式投機に本腰を入れ、数千ドルの元手から50万ドルの資産を得たという。

 確かな頭脳を持っていたハイドニクなのだが、ある時カリフォルニアの海を眺めていると、こんな言葉が頭に浮かんできた。

 

「教会を開き、子供を作れ」

 

 これを神の啓示と受け取ったハイドニクは、1971年に「神のしもべ統一教会」を設立。

 神の言葉に従ったとのことだが、実際には宗教法人に対する免税措置も目的の一つだった。

 司祭となったハイドニクは主にスラム街を回って信者を集め、教えを説きながら彼らにハンバーガーを振舞っていた。子供達からは「ハンバーガー司祭」と呼ばれて愛されるようになり、神のしもべ統一教会は着実に信徒を増やしていったのである。

 

 しかし、1978年。

 ハイドニクは知的障がいを持つ黒人女性の信者を妊娠させて監禁し、暴力を振るった疑いで逮捕された。

 生まれた子供は養子に出されたが、ハイドニクは他にも3人の女性に子供を産ませていた。いずれも知的障がいを持つ女性たちで、産まれた子供達は施設に引き取られていった。

 

 実刑判決を受けたハイドニクは1983年に仮釈放され、フィリピン人の女性と結婚。しかし妻はハイドニクの異常性欲と浮気癖についていけず、3ヵ月で離婚となった。

 なにしろハイドニクは妻ではない3人の女性と一緒にベッドにいるのを妻に見られた時、「お前も参加しろ」と妻に複数プレイを強要したり、気に入らないと妻を殴ったり無理矢理暴行したり、好き放題していたのだ。

 のちに彼女が男の子を出産したと知ったのは、彼女からの手紙を読んだ時だった。

 一体なぜこんなことをしていたのか?

 ハイドニクはどうしても自分の子供が欲しかったのである。

 神の啓示である「子供を作れ」という言葉。

 その話が本当なのだとしたら、当初は神の導きに従って子供を作ろうとしていたのだろう。しかし手段が手段であったため計画通りにいかず、ハイドニクは次第に神の言葉よりも、子供を作るということだけに執着するようになってしまったのだ。

 

「どうしても子供が欲しい。俺の血を引いた、俺の子供が。

 そのためには女が必要だ、どうにかして女を連れてこないと」

 

 

◆恐怖のハーレム計画

 1986年11月26日。

 ハイドニクはフィラデルフィアのスラム街で客引きをしていた、26歳の娼婦の女性に声をかけた。そうして女性を車に乗せたハイドニクは自宅へ行き、行為をした後で女性の首を絞めて地下室へと運び込んだのだ。

 目を覚ました女性が泣き叫ぶと、ハイドニクは彼女にこう言い聞かせたという。

「ここに何人もの女たちを閉じ込めて、俺の子供を産ませるんだ。大家族を作るんだよ」

 女性は恐怖のあまり何も言えなかった。

 この始めの犠牲者こそが、冒頭で男性に助けを求めた女性、ジョセフィーナ・リヴェラだったのである。

 

 ハイドニクは地下室に深い穴を掘り、ジョセフィーナが犯行的な態度を取った時などはその穴の中に彼女を入れ、上から板で穴を塞いだ。

 のちに犠牲となる女性達は皆、この穴に入れられるのを何よりも酷く恐れていたという。

 ちなみにこの「穴」は、映画「羊たちの沈黙」でバッファロー・ビルが女性を入れていた穴のモデルとなっている。

 

 ジョセフィーナを監禁した3日後、11月29日。

 今度は25歳のサンドラ・リンゼイが地下室に放り込まれた。

 サンドラは以前ハイドニクの愛人の一人だった女性で、その当時にハイドニクの子供を身籠ったが中絶していた。ハイドニクはそれを怨んでおり、今度こそサンドラに自身の子を産んでもらうと決めていたのである。

 

 約1ヵ月後の12月22日には19歳のリサ・トーマスが、

 翌年の1987年1月1日には23歳のデボラ・ダドリーが、

 1月18日には18歳のジャクリーン・アスキンズが地下室へ連れて来られた。

 

 女性達はみな鎖に繋がれ、連日ハイドニクの暴力的なセックスの犠牲となった。

 ハイドニクは女性達同士でも行為をするよう命令し、それを見て楽しんだり、気まぐれに殴ったり、食事を与えなかったりと惨い虐待を繰り返していた。

 薄暗い地下室、地獄のような日々、壮絶な痛みと屈辱――

 女性達が絶望に涙する中、始めの犠牲者であるジョセフィーナはこの地獄から脱するために懸命に知恵を働かせた。

 そうして模範的に振舞うようになったジョセフィーナを、ハイドニクは特別扱いをするようになったのだ。

 時にジョセフィーナは他の女性が脱走を企てていることを密告するなどして、着実にハイドニクの信頼を得ていった。

 ジョセフィーナは食事の際に地下室から出されて、ハイドニクと食卓を囲むようになり、ハイドニク同伴で外出も許されるようになった。

 もちろんジョセフィーナ以外の女性達は今までと同じ待遇で、食事はオートミールだけ。たまにドッグフードも食べさせられていた。

 

 

 2月某日。

 2人目の犠牲者サンドラと4人目の犠牲者であるデボラが、ハイドニクに必死の抵抗を試みるという事件が起こった。

 しかしハイドニクはサンドラの手足を縛って天井の梁から吊るし、その状態で次々とサンドラの口にパンを詰め込んだ。

 サンドラがパンを飲み込むまで口を押さえ付け、そうした虐待を1週間も続けた結果、サンドラはパンを喉に詰まらせて窒息――命を落としてしまう。

 ハイドニクはサンドラの遺体を運び出し、上の階でチェーンソーを使い彼女の解体を始めた。

 チェーンソーの音が止むと、ハイドニクは一緒に抵抗をしたデボラを階上へ連れて行き、キッチンの鍋の中を見せたという。

 鍋にはサンドラの頭が入っていた。

 デボラは当然ながら反抗心が萎んでしまい、ハイドニクはそれを見てほくそ笑んだ。

 その夜の食事には、ドッグフードにサンドラの肉を混ぜたものが出された。

 女性達は泣きながらも、食べなければ生きていけない状態だった。

 

 その一件以降、デボラはしばらく大人しくしていた。

 それでも脱出の機会は常に伺っており、隙をついて再びハイドニクに逆らい抵抗を始めたのである。

 しかしながらまたしてもハイドニクには敵わなかった。

 ハイドニクは連帯責任だと言い、従順なジョセフィーナ以外の全員を地下に掘った深い穴の中に入れた。

 この頃には、亡くなったサンドラの代わりとして新たな女性、そしてジョセフィーナに命令して穴の中に水を溜めさせ、電線を入れて電流を送るという凄惨な拷問をしたのだ。

 この拷問で、デボラは命を落としてしまった。

 

 

◆逮捕と裁判

 1987年3月24日。

 相変わらずハイドニクの女性に対する強姦と虐待は続いていた。

 そんな中、唯一模範的な態度を取る女性として気に入られていたジョセフィーヌが、ハイドニクに「あるお願い」をした。

「すぐ戻るから、少しの時間だけ子供達に会いに行きたい」

 これまでもハイドニクが同伴ではあったが、ジョセフィーナは外出やファストフード店での食事を許されていた。

 歯向かうこともなく、ハイドニクの願望に寄り添って理想通りの行動をしてくれている――。ハイドニクはジョセフィーナが完全に自分のモノになっていると思い、彼女の申し出に許可を出した。

 

 すぐに戻ると約束をして、ジョセフィーナは手を振りながらハイドニクの家を出た。

 そうしてハイドニクの監視の外に出られたと確信した瞬間、ジョセフィーナは一気に駆け出したのである。

 

 失敗は許されない。チャンスはこの1度きり。

 絶対に連れ戻されるわけにはいかない。

 

 ジョセフィーナは休むことなく走り続け、冒頭のヴィンセントの家に駆け込んだ。

 それから警察に通報し、ようやくハイドニクは逮捕されたのである。

 

 裁判の結果、ゲイリー・マイケル・ハイドニクには死刑が言い渡された。

 1999年7月6日、ハイドニクの薬物注射による死刑が執行された。

 

 

 ジョセフィーナ・リヴェラ 26歳

 リサ・トーマス 19歳

 ジャクリーン・アスキンズ 18歳

 アグネス・アダムズ 24歳

 彼女たちはハイドニクの逮捕と共に助け出された。

 

 サンドラ・リンゼイ 25歳

 デボラ・ダドリー 23歳

 2人の女性はハイドニクによる凄惨な拷問により、命を奪われたのである。

 

 

 ★

 

 

 自分だけのハーレムを築いて子供をたくさん作るという、謎の野望を抱いていたゲイリー・ハイドニク。

 日々の拷問に加えて、命を奪った女性の肉を食べさせていたなどとてもまともな思考ではなく、犠牲になった女性達が受けた苦痛は計り知れない。

 この事件は、それほど遠い昔に起こったものではない。

 いつの世にも異常な思考を持つ者はいて、様々な欲望の犠牲になってしまう人達がいるのだ。

 

 

本事件を動画で見たい方はこちら

 

 

 

 

 

※当ブログの文章・画像の無断転載・複製を禁じます。

Copyright © Project Limbo All Rights Reserved.