歪んだ絆
犯罪者の夫と加担する妻

訳が分からなくなるくらい、人を愛したことはありますか?
愛する人のためならばあなたはどこまでできるだろうか?
全財産も投げだせる、命さえも捧げられる、それとも――家族の体も提供できる?
この事件が起きたのは1990年のカナダ。
若い女性ばかりを狙って何件もの性的暴行をしていた男、ポール・ケネス・ベルナルド。
そんな性犯罪者と結婚した女、カーラ・ホモルカ。
写真だけを見ると幸せそうな美男美女だが、この2人、裏では吐き気がするほどおぞましい犯罪に手を染めていた。
「ポールは私の初めての男性になれなかったことを残念がっているの。
だから私、妹のバージンを彼にプレゼントすることにしたのよ」
異常な男を愛してしまった女は、どう考えてもまともでなくなっていた。
1993年1月5日。
カナダ、オンタリオ州 スカボロー。
この日、地元警察に1人の女性がやってきた。女性はあちこちに痣があり、誰かに暴行を受けたと一目で分かる様子だった。
女性の名前は、カーラ・ホモルカ。当時23歳。
何があったのかと訊ねる警官に、彼女はこう言った。
「私の夫が女性を誘拐して、性的な奴隷にした上で命を奪った」
実はこのスカボローでは、6年前の1987年から約3年に渡って大勢の若い女性が襲われる性的暴行事件が起こっており、地域の女性達に夜間のバス利用を控えるよう呼びかけが起こるほどになっていた。バス停からほど近い場所で襲われる女性が多かったからだ。
正体不明の強姦魔はスカボロー・レイピストと呼ばれ、警察はなかなか尻尾を出さない犯人の捜索に躍起になっていた。
最初の事件から6年経ってしまったが、警察は長年の捜査で、ようやくスカボロー・レイピストの容疑者を絞り込んできていたのだ。
それが警察にやってきたカーラの夫、ポール・ケネス・ベルナルド。当時29歳の男だった。
カーラの証言から、ベルナルドが強姦事件の犯人で間違いないと踏んだ警察。
ただちにベルナルドは逮捕されたのだが、実はこの事件には、おぞましい夫婦の闇が隠されていたのである。
夫の犯罪を訴えたカーラは、ベルナルドが女性に乱暴している場面のビデオ撮影を担当していたのである。
◆出会ってしまった2人
ポール・ベルナルド。
1964年8月27日、カナダ・オンタリオ州スカボローの生まれ。
ベルナルドが生まれた家は裕福で生活に困ることはなかったが、1つ大きな問題があった。
それは、一家の大黒柱であるベルナルドの父が、女性を道具のように扱う最低男だったこと。
父は頻繁に妻や子供達に暴力をふるう男であり、ベルナルドの母はいつも痣だらけの状態だった。これはベルナルドが生まれる前から起こっており、耐え切れなくなった母は男友達に相談を繰り返すうちベルナルドを身籠ってしまった。
つまりポール・ベルナルドは、粗暴な父親の実の子ではなかったのだ。
父は妻の不貞を知った上でベルナルドを我が子として育てる許可を出したが、もちろんそれと同時に家族への虐待はエスカレートしていった。
しかも父親の狂気は暴力だけではなかった。
近所の少女や、なんと自分の娘にまで性的な悪戯をしていたのである。
そんな父親を見て育ったベルナルドは、16歳の頃に母親から「親子関係における事実」を打ち明けられた。
自分は、この家の父親の子供ではなかった。
相当なショックを受け、ベルナルドは母のことを「だらしない女」だと思うようになった。
そして幼少の頃は礼儀正しく可愛いと近所で評判だったベルナルドは、この頃から育ての父を同じような振る舞いをするようになったのである。
やがてベルナルドは10代の若い女性を暴行することに悦びを覚え、のちに「スカボロー・レイピスト」と呼ばれるほどの連続強姦事件を起こすことになるのだった。
1987年。
最初の犯行が行なわれる少し前、ベルナルドは仕事を通してのちの妻となるカーラ・ホモルカと出会った。
この当時で会計士のベルナルドは23歳、動物病院勤務のカーラは17歳。
顔立ちも良く仕事もできるベルナルドに、カーラはたちまち夢中になった。
カーラは二人の妹がいる三姉妹の長女で、幼い頃は一時期貧乏に苦労したが、両親の仕事が上手く行き始めてからは特に不自由な生活をしていたわけではない。
つまりカーラは普通の女の子だった。
ベルナルドはこの時点で既に サディスティックで乱暴なプレイをするような男だったが、カーラはこれにも夢中になった。
自分を心から愛し、普通の女性では耐えがたいようなプレイにも乗ってくれるカーラ。最高のパートナーを手に入れたというのに、それでもベルナルドは欲望を抑えることができなかった。
カーラと出会った直後から、ベルナルドは次々と若い女性を襲うようになったのだ。
ベルナルドは日ごろから「自分の性奴隷がほしい」と思っていたのである。
しかもカーラも恋人の犯罪を知った上で、それに協力していたというから恐ろしい。
◆スカボロー・レイピスト
1987年5月から90年の3年間で行なわれたベルナルドの犯行は、以下の通り。
1987年5月4日。21歳の女性を実家の前で30分以上暴行。
5月14日。2回目の犯行、彼は実家の裏庭で19歳の女性を1時間以上暴行。
12月16日。3回目の犯行、15 歳の少女に対して約1時間の暴行。
12月23日。4回目の犯行、17歳の少女を暴行。
この時点でベルナルドは、正体不明のスカボロー・レイピストと呼ばれるようになった。
1988年4月18日。5回目の犯行、17 歳の少女を45分に渡って暴行。
5月30日。6回目の犯行、18歳の女性に30分に渡って暴行。
11月16日。7回目の犯行、18歳の少女を暴行。
1989年8月15日。8回目の犯行、22歳の女性に対して2時間に渡り暴行。
11月21日。9回目の犯行、15 歳の少女に対して45分に渡り暴行。
12月22日。10回目の犯行、19歳の少女に対して30分間暴行。
1990年5月26日。11回目の犯行、19歳の女性を1時間以上暴行。
11人目の被害者となった女性がスカボロー・レイピストの顔を鮮明に覚えており、警察は合成写真を作成、新聞に掲載された。
また、この11人の他にも、襲われたが運良く逃げ出せた女性が何人かいた。
ベルナルドの犯行は、女性を暴行するだけではなかった。
ベルナルドは女性達に容赦のない暴力をふるって拷問し、女性の顔に大小の排泄物をかけたりしていたのだ。
その犯行にはカーラを参加させる時もあったが、だいたいの場合、カーラはベルナルドが女性に行なう非道な仕打ちをビデオで撮影する役割を担っていた。
カーラは、ベルナルドの犯行を知った上で協力していたのである。
トロント警察も総力を挙げてスカボロー・レイピストの正体と行方を追ったが、なかなか尻尾を出さない。
ベルナルドは多くの場合、夜中にバス停付近に身を潜め、バスから降りてきた1人の女性をつけ回して犯行に及んでいた。
そのためバスを利用する女性は充分に注意をしてほしいと警察が呼びかけをしており、一度はバス停付近にいたベルナルドに気付いた警官が彼を追ったこともあったが……残念ながら逃げられてしまったという。
この時点で2人は既に救いようのない犯罪者となっていたが、1990年12月――更なる犯行に手を染める。
今度はただの強姦事件ではない、被害者の命が奪われてしまったのだ。
しかもその被害者というのは、カーラの実の妹、15歳のタミー・ホモルカだった。
「ポールは私の初めての男性になれなかったことを残念がっているの。
だから私、妹のバージンを彼にプレゼントすることにしたのよ」
◆犠牲となった少女達
カーラとの結婚を翌年に控えていたベルナルドは、カーラの妹であるタミーにも夢中になっていた。
どうにかして彼女を自分の物にできないかと考えていたベルナルド。
なんとカーラは彼の願望を叶えるため、タミーの部屋の窓ガラスを割るなどして いつでもベルナルドが妹の部屋へ行けるように協力した。
また動物病院で働いていたカーラは職場から動物用の睡眠薬を持ち出し、タミーの食べるスパゲティにそれを混ぜて彼女を眠らせた。
意識を失い無防備になってしまったタミーに早速手を出そうとしたベルナルドだが、1分後にタミーが目を覚ましたため、ここでの犯行は断念している。
しかし、1990年12月23日。
カーラはまたしても動物用の睡眠薬をカクテルに混ぜ、それをタミーに飲ませた。
こうして意識を失ったタミーは、ベルナルドに欲望のまま犯されてしまったのである
カーラは妹のバージンを婚約者に捧げることができ、大変満足していた。
そしてこの時も、タミーに乱暴するベルナルドをビデオで撮影したのだった。
事が終わると、タミーは帰らぬ人となっていた。
嘔吐した吐瀉物が喉に詰まり、窒息してしまったのだ。
予想もしていなかった展開に慌てた2人は救急車を呼んだが、タミーが息を吹き返すことはなかった。
この時よく調べていればタミーの体に暴行の形跡があったはずだが、結局この件は事故とされてしまった。
予定外とはいえ2人がタミーの命を奪った約半年後、1991年6月29日。
ベルナルドとカーラは結婚式を挙げ、2人は正式に夫婦となった。
幸せそうなカップルに見えるが、この裏で2人は常軌を逸した犯罪を繰り返していたのだ。
しかも2人の結婚と同時期に、また別の少女が手にかけられていた。
14歳のレズリー・マハフィーという少女がこの2人に捕らえられ、壮絶な拷問と暴行を受けたのちに電動の丸ノコギリで10個の部位に解体され、重石を付けて川に遺棄された。
それから約2週間後、川の水位が下がって彼女の遺体が発見されたのである。
また1年後の1992年4月30日。
昨年から行方不明となっていた15歳の少女クリステン・フレンチの全裸の遺体が排水路で発見された。
調べた結果、クリステンは13日間にも渡って拷問と暴行を受けていたことが判明。
タミーとレズリー、そしてクリステン。
何の罪もない3人の少女は、想像を絶する苦しみと屈辱を受けながら亡くなったのだ。
どれだけ怖かったか、どれだけ痛かったか。2人がどんな言い訳をしたとしても、決して許せない犯行である。
――しかし冒頭で、カーラが警察に駆け込んでたのを覚えているだろうか。
一連の犯行後、会計士の仕事も辞めて荒れていたベルナルドは、カーラにも酷い暴力をふるうようになったのである。
そして耐えられなくなったカーラが、迷った末に警察に行ったのだ。
◆極悪夫婦の逮捕
カーラの証言を得た警察はベルナルドを逮捕。
ようやくスカボロー・レイピストの身柄は拘束され、タミーとレズリーとクリステンの死にもこの夫婦が関わっていたことが判明した。
証拠となる電動の丸ノコもベルナルドの自宅付近の湖から発見され、ポール・ケネス・ベルナルドには仮釈放なしの終身刑が言い渡された。
(カナダには死刑制度がなかった)
共犯者のカーラだが、カーラの自供なくしてはベルナルドの犯行の詳細が分からなかったため、司法取引を行なうこととなった。
カーラは夫の罪を自供する代わりに、何と懲役12年という非常に軽い判決を受けたのだ。
ちなみに2005年の7月にカーラは釈放されている。
カーラが撮影したビデオの行方を巡って、ネット上では様々な噂が飛び交った。
マニアがそれを入手したとか、日本の暴力団がそれを買い取ったとか、全ては根拠のない噂である。
またポール・ベルナルドの顔写真が公開されると、「私も調教してほしい」という若い女性達からのファンレターが獄中に届くようになったという。
非常に理解しがたい上、非常に後味の悪いエピローグである。
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何年にも渡り若い女性を苦しめた挙句、3人の命を奪ったベルナルドとカーラ。
本事件もまた夫の欲望に協力する妻という構図なのだが、どんなに思考を巡らせても 妻の立場の心理状態がいまいち理解できない。
夫の暴力で洗脳されていたというケースもあると思うが、この事件のカーラは、自分から進んで協力していたように思える。終盤の逮捕直前以外は、特にカーラはベルナルドから暴力等を受けていなかったのだ。
女性達は本当に、夜道の一人歩きなどには必要以上の注意を払ってください。
もちろん男性が被害に遭うことも無いとは言い切れないので、男女ともに注意してほしい。
ルドルフ

本事件を動画で見たい方はこちら
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