隠された狂気
笑顔の裏に潜む猟奇的衝動

あなたのパートナーは優しいですか?
頭が良くて誰に対しても気さくで、真面目な男性と出会えた女性は、幸せになれるかもしれません。
もちろんその優しさが、演技でなければの話ですが。
この事件が起こったのは1986年のアメリカ。
どこにでもいるごく普通の若い夫婦。
平凡だが穏やかで、特に不満のない毎日。
しかし、夫婦の妻は知らなかった。
愛する夫が、自分の妹によからぬ思いを抱いていることを。
優しくて頭の良い夫が、悪魔主義のカニバリストであったことを。
1988年9月7日。
アメリカ、ウィスコンシン州 フィリップス。
この日、地元の警察に1本の電話がかかってきた。
「私の妻が何者かに襲われました。どうか助けてください!」
男性の悲痛な訴えを聞いて、警察はただちに妻が運ばれたという病院へ駆け付けた。
何者かに襲われたという男性の妻――22歳のエミリー・ウェーバーは、とても悲惨なダメージを受けていた。
頭部はスコップで30回近く殴打され、体中切り傷と痣だらけ。煙草の火を押し付けた後もあり、性的暴行もされている。下腹部の損傷も酷く、異物を挿入された形跡やヤケドをさせられた形跡もあった。
「これは酷い……。奥さん、犯人に心当たりは?」
あまりにも残酷な暴行を受けたエミリーは当然ながら動揺しており、警察の質問に上手く喋ることができない。
夫はそんな彼女に寄り添いながら、懸命に彼女を宥めていた。
やがてエミリーは警察に語り始めた。
「私を襲ったのは、その、……」
エミリーの証言には、いくつもおかしな点があった。
曖昧で夫の話とも食い違いが多く、いくらショックを受けているとはいえ、警察は彼女の証言に対して妙にちぐはぐな印象を受けたという。
混乱しているのか?
それとも何かを隠しているのか?
怪しんだ警察は詳しく話を聞くため、改めて夫抜きでエミリーに事情聴取を行なった。
するとエミリーは重い口を開き、驚くべき事実を語り始めたのである。
「私は、夫のジョンから暴行を受けました。
彼は私をひと気のない場所に連れて行き、そこで酷い拷問をしたんです。
それだけじゃない……。
夫は私の妹を、殺して、食べたと言ったんです」
エミリーの夫、ジョン・ウェーバー。
しかし彼こそが、「妻が暴行された」と通報してきた人物である。
この時の警察はまだ知らなかった。
ウェーバーという男の、子供の頃から培われてきた恐ろしく黒い欲望を。
◆好青年の闇
ジョン・R・ウェーバー。
1962年アメリカ、ウィスコンシン州の生まれ。
長閑な田舎町であるフィリップスで育ったウェーバーは、特に家庭が荒れていたとか 虐待を受けていたなど、多くのシリアルキラーに見られるような悲惨な子供時代を過ごしていたという記述は特に見られない。
頭も良く、ごく普通の少年だったウェーバー。
しかしそれは表向きで、本人は精神を病み、日ごろから幻覚を見ていたという。
何が理由でそうなっていたのかは謎である。
しかしウェーバーは確かに子供の頃から変わっていて、祖母の服を拝借し自分で着ながら性的興奮を覚えたりと、5歳の頃から異常性癖の片鱗をみせていた。
幻覚の話が本当ならば、日常生活の色々な場面で苦労もしてきたことだろう。
それでもウェーバーはごく普通の少年として育っていった。少なくとも周囲はそう思っていた。
しかし10代の多感な時期に入ると誰しもが何かの影響を受けるように、ウェーバーもある物に影響され始める。
ウェーバーがのめり込んだもの、それは悪魔だった。
思春期のウェーバーは悪魔崇拝に傾倒し、本などで情報を取り入れて黒魔術の儀式を行なうようになった。
同時に幼い頃から持っていた異常性癖も、ますますエスカレートさせている。
ウェーバーはSM系の雑誌を読み耽って妄想を膨らませ、頭の中で女性に惨い拷問を行なうようになっていた。
明らかに普通ではなくなってきていたウェーバーだが彼は元来頭が良かったため、自身のそんな異常さを徹底的に隠し、表に出すことはなかった。
自身の悪魔主義や惨い妄想が世間にバレたらどうなるか、ウェーバーはそれをよく知っていた。
そのためごく一般的な恋愛をした結果、エミリーと出会って幸せな結婚をした。
しかしエミリーとの結婚こそが、今回の惨劇のきっかけとなってしまった。
なぜならウェーバーが、エミリーの妹であるカーラと出会ってしまったからだ。カーラはまだ17歳の女子高生だった。
ウェーバーはそんな少女に目を付け、こう思った。
――この娘を徹底的に拷問して、あの柔らかそうな肉を食ってやりたい。
◆惨過ぎる犯行
妻の妹、カーラに目をつけたジョン・ウェーバー。
しばらくは欲求を抑えていたが、限界に達するまでそう時間はかからなかった。
1986年11月。
ウェーバーはカーラに銃をつきつけて脅し、車に乗せてひと気のない森の中へと連れて行った。そこで、凄惨な拷問が行なわれたのである。
17歳のカーラは姉の夫によって服を剥ぎ取られ、性的暴行を受けたのちに苦痛を伴う攻撃を受けた。
乳房の先端をライターで焙られ、下半身に手押し車のハンドルを入れられ、体じゅうを傷付けられた上、性器と肛門にビール瓶を挿入された。
あまりにも惨い仕打ちだった。しかし、これで終わりではなかったのだ。
ウェーバーはナイフを取り出し、ぐったりとしたカーラの乳房を切り取ったのである。
これらの拷問を受けている間、カーラはまだ息があった。つまり生きている状態で これほどまでの仕打ちを受けたのだ。
必死に抵抗し、泣き叫んで許しを請い、心の中で何度も神や母を呼んだかもしれない。
未来ある17歳の少女が姉の夫に襲われるなど、誰にも想像できなかっただろう。カーラの絶望を思うと非常に辛い。
ウェーバーは欲望の全てをぶつけたのち、カーラの首に手をかけて命を奪い、遺体をトランクに隠したのだった。
そうしてカーラは、行方不明扱いとなったのである。
しかし、この先ずっと遺体を隠しておくわけにはいかない。
ウェーバーは車を走らせながら、頭の中では次の計画を練っていた。
恐ろしい計画と野望を胸に、ウェーバーはカーラの遺体を室内に運んだ。
これから何をしたのかというと、なんとウェーバーはカーラのふくらはぎの肉をナイフで切り取り、ミンチにしてミートパイを作ったのである。
焼き上がったミートパイを食べたウェーバーはのちに「結構美味かった」と言っている。
そして彼女の命を奪う前に切り取っていた乳房も調理し、薄く切って食べ、その他の部分は土に埋めて放置した。
もはや人間のすることではない。
しかもこの事件は、その後2年間も明るみにならなかったのである。
※ウェーバーは両親が残した農場の空き家を持っており、犯行はそこで行なわれていた可能性が高い。
またカーラの他にも9人の女性を手にかけたことがあるという記述もあったが、この事件は資料が少なくて詳細が判明していない部分も多い。
◆異常な夫の末路
ウェーバーがカーラを手にかけてから2年後。
2年間は欲望を抑えていたのか、それとも別の女性を襲っていたのか。
一説では9人の女性を襲ったという記述もあるが定かではない。
ともかくウェーバーは、今度は自身の妻であるエミリーに狙いを定めたのだ。
1986年11月6日。
夜、ウェーバーはエミリーに「サプライズがあるんだ」と言って家から連れ出した。
エミリーには夫の誘いに逆らう理由はない。――いや、理由はこの後で述べるが、エミリーが夫に逆らうことなどできなかったのである。
そうしてついて行った先には、元々はウェーバーの親の持ち物である農場の空き家があった。
時刻は夜中、誰もいない農場。
ウェーバーはエミリーに襲いかかり、スコップで30回近く頭を殴った上で性的暴行をした。
下半身に煙草の火を押し付けられたり手押し車のハンドルを入れられたりと、それはカーラが受けた拷問と似たようなものだった。
それでもエミリーの命は助かっており、ウェーバーは事が終わってから彼女を病院に連れて行っている。
もちろん、たっぷりと脅しをかけるのを忘れていなかった。
「いいな、俺がやったと言うんじゃないぞ。言ったらどうなるか分かってるな」
夫の言葉に従ったエミリー。
しかし結局は警察を出し抜くことなどできず、真実を告白するしかなかった。
それによってウェーバーが逮捕されることとなるのだが、捜査の途中でウェーバーの車から決定的な証拠が出てきている。
それは1本のカセットテープだった。
警察が再生してみると、テープから聞こえてきたのはウェーバーの声だった。
ウェーバーは淡々と、冷静に、自分がカーラに何をしたかを語っていた。
壮絶な拷問をしたこと、彼女の肉を調理したこと、それを食べたこと。
そして音声の最後は、こう締めくくられていた。
「いいかエミリー。お前も俺の言うことを聞かなければ、カーラと同じ目に遭わせてやるからな」
この音声テープが決定的な証拠となり、かくしてウェーバーは逮捕されたのである。
証拠をつきつけられたウェーバーは大人しく罪を認め、カーラの遺体を埋めた場所を自供した。
裁判でテープの内容が公開されると、そのあまりにも残酷な内容に陪審員は騒然となった。
そうしてジョン・R・ウェーバーには、懲役168年の刑がくだされた。
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サタニズム、サディズム、カニバリズム。
3つの裏の顔を隠し、好青年を装っていたジョン・ウェーバー。
妄想のプレイを現実の犯罪に変えてしまった瞬間、ウェーバーは完全に人の道を捨ててしまった。
結婚してしまったエミリーもだが、それ以上にカーラの受けた苦痛と絶望は計り知れない。本当に怖かったことだろう。
恐ろしいのはウェーバーがそれほどまでの狂気を完全に隠し、一般人として女性と出会っていることだ。
ルドルフ

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